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今でもあの時の映像は、はっきりと脳裏に焼きついています。
玄関の戸を開けたとき、上がり框の障子は開いていました。二間続きの奥の座敷に、
あねさん被りの祖母が朝食を食べていたのでしょう、ちゃぶ台を前にして丸めた背中を
向こう向きにして座っていました。
その祖母に向かってわたしは「死んじゃった」と叫んだのです。 |
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わたしは妹の病状や母の言動から、何らかの不安を感じていました。
妹の「死」による喪失感を漠然と感じ取り、縁起を担いでいたのかもしれません。
不吉な言葉を口にだしてしまえば「死」につながるような気がしていたのです。
だから、「死」という言葉を口にだす前に、一瞬、確かに戸惑ったのです。
それなのに、なぜ口走ってしまったのか・・・。
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「なんてことを・・・ああ〜・・」と、祖母は呟きながら下駄を突っかけ、駈け出しました。
家に近づくにつれ、祖母のカタカタと鳴る高い下駄の音がなおさら不安を掻き立て、
〈美子はもう死んでしまうんだ・・・〉、その思いだけが頭の中をグルグルと
駆け巡っていました。
病院での、わたしのおどける姿に、キャッキャと喜ぶ妹の笑顔が過りました。
わたしは妹の死を口にした自分を責めました。
この辛い現実を誰かに打ち消してもらいたく、心の中で助けを求めていました。
涙が拭っても拭ってもあふれ出て止まりませんでした。
祖母が家に着いて間もなくして、妹は亡くなりました。 |
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